2013年2月アーカイブ

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    ウズベキスタンで社会から疎外されている独特な民族集団<ムガート>は、現代生活が浸透するこの地域において、いまなお移動生活をおくっている。タジキスタンやカザフスタンにもまたがって生活し、「ジプシー」と呼ばれている。
    町や村を転々とし、占いや季節労働、空き瓶回収、物乞いなどによって糊口をしのぎ、周囲からは汚らしく、不吉な存在だと思われている。
    その生活様式はいくつかの点でヨーロッパのロマに似ている。しかし、何世紀も前にインドをから移り住んだ可能性を共有する以外両者のあいだに直接のつながりはない。
    文化人類学者たちによると、ムガートはカースト制度を維持するなどインド起源の確かな証拠があるという。しかし、部外者にはムガートの日々の暮らしはほとんど知られていない。<リュリ>の名でも知られる彼らはかたくなな閉鎖社会を保ち続けているのである。
    このことは多くのウズベク人にとっては好都合でもある。人々は通りでムガートだとわかると避けるように歩き、その存在を口にすること自体がタブーとされる。
    ウズベキスタンの首都タシケントの写真家アレクサンドル・バルコフスキーも長年この同国人たちを恐れてきたが、やがてそれが好奇心に変化した。ムガートの人々のことを知り、その世界を理解したいと思うようになった。
    <バルコフスキーはムガートの信頼を得て写真を撮るために2年を費やした。その成果をムガートの母親と子供たちを描いたリトグラフ集<ジプシーのマドンナたち>にまとめた。バルコフスキーは現在この集団に関する初のドキュメンタリー映画を製作中である。
    (市橋雄二/2013.2.25)
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    ○「富士日記」武田百合子著 中公文庫  昭和39年から昭和51年の期間にわたって、作家、武田泰淳との富士山麓での山荘生活の日々を書き記した全3巻の長大な日記。「ひかりごけ」「森と湖の祭り」などで知られる戦後文学の巨人、武田泰淳との半生を支えてきた百合子夫人が日常のあれこれを書きとめていくスタイルながら、底から浮かび上がってくるものはきわめて興味深い。ひとこともそれらしい言葉を発しなくとも、夫、泰淳への愛情、信頼、才能への心酔が根底に貫かれており、その上で、夫人の天衣無縫ぶりや、鋭敏な感性が、日記を勧めるうちに醸成されていく過程が読み取れ、稀有な2名の個性が生み出した豊穣な人生模様が偲ばれる。現在、上巻を読み終えただけだが、全巻終えたら、改めて記したい。
    ○「インド酔夢行」田村隆一著 講談社文芸文庫 詩人、田村隆一が1970年代に、インドへの2度の旅をした紀行文。この本の要諦はインド案内というのではなく、あくまでインドという存在をまるごと詩人田村隆一がどのような言語で表現しうるかという観点で読むことではないかと思う。そうした意味では、酒をこよなく愛した田村隆一の目は酔ってはおらず、覚醒した眼でインドに対しているのがすがすがしい。世界で一番美しい夕陽を見に、最南端のコモリン岬を、目指してデリーから南下する旅の模様が田村独特の表現で綴られる。全体としてはインドを見る田村の視座はインドの本質を捉えており、今読んでもその論点に古さを感じないのはさすがだ。混沌、汚濁、清浄、不浄の中にインド的なるもの、人間の原風景を探る旅紀行。
    ○いまいち本気で取り上げたいと思う映画に出会わないこの頃である。映画では「レ・ミゼラブル」に期待したが、思ったほどではなかった。ドラマの展開が分かりきっているせいもあるが、感情移入ができないままに、歌のオンパレードを聞かされた感じなのだ。各登場人物の造型が表面的で、説得力に乏しい。また「塀の中のジュリアス・シーザー」はタヴィアーニ兄弟監督で、ベルリン映画祭の最高賞受賞ときき、期待していたが、全く意外ながら退屈だったとしか言いようがない。宣伝文句にあるような、「刑務所自体がローマ帝国へと変貌し現実と虚構の境を越えていく」気配はなく、これなら普通に芝居で見たいものだと思ったのである。工夫はしているようだが、刑務所の中という閉鎖性が鬱陶しく感じられ、映画でやるなら、その特徴を生かして、思い切り架空の外界でのロケと塀の中の実写とのモンタージュによる変換などをすれば面白くなったのではないか。単に、実際の受刑者が演じるという意外性によりかかるところは余り好まない。
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