2013年4月アーカイブ

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    2013年4月8日、<世界ロマの日(International Roma Day)>を祝う式典がクロアチア政府系のロマ組織<ロマ全国会議>の主催によりザグレブのミマラ博物館で開かれた。
    式典にはベスナ・プシッチ第一副首相兼外務・欧州問題大臣、クロアチア国会議長の特別代理で副議長を務めるドラギッツァ・ズグレベッツ、クロアチア大統領の特別代理ダニツァ・ジュリチッチ・スパソビッツ、国会議員、各国大使、政府機関代表、国際団体代表、そして地方のロマ全国少数民族評議会代表および議員、ロマ市民協会やその他のロマ組織のメンバーなど多数のロマも参加した。
     ロマ全国会議のベリコ・カイタジ代表は、今年はクロアチアのロマ社会にとって重要な出来事があったと述べ、ザグレブ大学の人文社会科学部に二つの新設講座が設けられ、ロマニ語と文化が教えられることになったことを明らかにした。また、クティナとダルダの二つの都市に地方政府の協力によりロマ文化センターが設立された。
    カイタジ氏はスピーチの中で、第二次世界大戦中にロマが被った苦難に関する学術的な調査と、それらの情報がカリキュラムの中に取り入れられ、メディアに取り上げられることが必要だと訴えた。ロマ全国会議は、かつてのウスタシャ(訳注:第二次世界大戦中ドイツと同盟を結び大量虐殺を行った民族主義団体)のヤセノヴァッツ収容所内のロマ墓地において8月2日に追悼式を行い、犠牲者の追悼記念日にするとのことだ。
     また、カイタジ氏は、「クロアチアのロマの多くにとっての最大の関心事は住居の合法化であろう。この問題の大きさに鑑み、社会的に恵まれないロマの住居の合法化のために1200〜1500万クーナ(クロアチアの通貨単位)の予算を計上するようクロアチア政府に発議した」と語った。
     ベスナ・プシッチ第一副首相兼外務・欧州問題大臣は、クロアチアが2013年7月1日をもってEU(欧州連合)の正式加盟国になることに触れ、「われわれはロマ社会の持つ経験を活かせるだろう、なぜならば彼らは国家を超えた広い環境の中で長く暮らしてきたからだ」と発言した。大臣はまたロマ全国会議がクロアチア政府にとって重要で対等なパートナーであるとの認識を示した。
     クロアチア共和国の少数民族評議会の代表であるアレクサンダル・トルノイアー氏は、「ロマの人々が真に理解されるために公共の場や政治に取り込まれるべきだ」と言い、  保健大臣のライコ・オストジッチ氏は、「ロマの社会にとって三つのキーワードがある。それは教育と教育と、そして教育である」と力説した。さらに、ロマの人々とその言語、習慣、文化がクロアチア社会を豊かなものにしていると指摘した。その他、クロアチア議会の副議長らの挨拶のあと、ロマの音楽楽団「トリオ・ミュリッツ」がロマの伝統歌謡を披露し、式典は閉幕した。
    訳者コメント:この記事はクロアチアの多くのメディアが配信しているのだが、二つの点を指摘しておきたい。
    ひとつは4月8日の記念日について。これは1971年に世界中のロマの代表がロンドンに集まって開催された第1回世界ロマ会議で定められた記念日であり、今日においてもインドを含め世界各地で祝われており、ロマにとっての重要な記念日として定着しているということが本記事からもうかがえること。
    もうひとつは、クロアチアのEU加盟と本記事との関連について。式典に政府関係者が多く参列していることからもわかるように、本式典の開催と関連記事の配信はEU加盟を控えてクロアチアという国がいかに人権に配慮した政策をおこなっているかを国際的にアピールしようとする意図が読み取れる。もちろん、加盟がきっかけとなってロマを取り巻く環境が少なくとも制度上改善されるのであれば、それは悪いことではないのだが。
    (市橋雄二/2013.4.20)
  • 小沢昭一:芸の精髄~「唐来参和」DVD化

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    ozawa.jpgのサムネール画像 引退のための興行として1983年から2000年まで延べ660回の公演を重ねた小沢昭一の代表的な演目である。ひとり語りの形式をとりながらも、従来のひとり芝居とは趣を異にする、いかにも小沢昭一がたどり着いた芸風を明らかにした芝居だ。
    井上ひさしの「戯作者銘々伝」のなかの一篇、「唐来参和」を読み下す異色の芝居である。
    構成は2つに分かれており、1部は小沢の漫談フリートークとでも言うしかない独特な味わいを持つ。吉原にまつわるさまざまな事象や歴史的、風俗的変遷や成立事情を巧みに展開しつつ、2部への予備知識やヒントをさりげなく散りばめていく。このくだりの運びは話芸的にも表現手法的にも絶妙で、時事の話題を交えながら一気に客席の心を掴んでいく。
    吉原誕生の裏話や新旧吉原への指摘、吉原細見(吉原情報誌)、洒落本,黄表紙、戯作者などから井上ひさしの「戯作者銘々伝」に至り、いよいよ本筋に入るのであるが、扮装の変化や舞台美術の設定まで手際よく進む。ここまでが50分という長大な枕である。単なる導入部というより、これ一本で十分お金が取れる名人寄席芸だ。
    話は、今は、しんこ指つくりに身をやつす老婆の回想である。かつて彼女は加藤源蔵という男の嫁であったが、亭主の性癖で2度までも郭に売り飛ばされ、苦界に身を沈めるという境遇を味わった。男は、酒が入ると、おかしくなり人の意見の逆を行くという癖がある。胸の奥のからくり、仕掛けが自分でもわからない、気まぐれいっぱいの性格の持ち主なのである。一時は唐来参和という戯作者で名を成すほどだった男もやがて落ちぶれ果てて、ついにかつての恋女房に遭遇するのだが・・・。
    小沢昭一が演じる源蔵と女房の発する言葉や身のこなしからは江戸時代に生きた人間の体臭や息遣いが生々しいほどに伝わるのだが、小沢の仕掛けは複雑で奥深い。悲しくて,可笑しい振る舞いや言葉のやり取りに思わず笑うが、その笑いにはすぐさま冷や水がかけられる。ひとつの感情に浸されておれないのだ。ゆすぶられるように、さまざまな虚実皮膜の表現に引きずり回される。江戸の薄幸の女に感情移入していると、いつのまにかギャグに見舞われるといった具合。
    しかしながら、最後には人間の不条理な運命に熱い共感を滲ませながら、泣き笑いの悲喜劇は完結する。人間の内奥に潜むデモーニッシュな存在に圧倒されながら、深い劇的感動に身を浸す。なにか凄いものを見てしまったという思いにとらわれるのである。
    最後に本DVDに寄せられたと二人の文章を一部紹介する。
    「名人たちの芸は古来よりどのような構造を持ち、どのような手練手管で実行されてきたかの、これは一瞬も見逃せない教科書である。だから芸人はみな観なければならない。」(いとうせいこう氏)
    「幼いころから慣れ親しんできた落語、講談、浪花節に加えて、万歳、浄瑠璃、説教節から紙芝居やからくり、大道香具師の口上にいたる、ありとあらゆるこの国の話芸を内臓した、小沢昭一の役者的教養に裏打ちされたものなのだ。」(矢野誠一氏)
    矢野氏の文章には、小沢さんの畏友ともいうべき演出家、早野寿郎氏の小沢さんとの関係が触れられている。重要な視点であり、敬服。
    解説書が充実してるのも嬉しい。
    いとうせいこう、矢野誠一の書き下ろしを始め、公演パンフレットより再録した小沢昭一、井上ひさし、長与孝子の文章が載っており、親切な編集だ。
    しかも全660回の公演日付、主催団体、会場、ステージ数そして観客動員数が載った上演記録が載っており資料的価値も高い。
    追記:この作品のビデオ編集の思い出。編集に際しては小沢さんの注文はクローズアップはできるだけ避けて、舞台全体を見せるロングカットを多用するようにとのことだった。 しかし今、改めて見てみるとアップで見る表情がなつかしく、小沢さんの絶頂期の表情が確認できて嬉しいのである。在りし日の姿を見るのが、つらいのでなかなかDVDを観られなかったが、観はじめると、いつのまにか、見入ってしまっていた。
    DVDはビクターより発売中。
    小沢昭一の 唐来参和
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