2013年12月アーカイブ

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    ペドロ・アルモドバル監督をして「最高のスペイン映画」と言わしめた本作は、モノクロ&サイレントという手法を用いて敢えて制作上の制約を課すことで表現力を研ぎすまし、撮影・編集という映像技術に加えて音楽や美術など多くのスタッフが参加して作る総合芸術としての映画の面白さを再発見させてくれる秀作だ。
    ブランカニエベス(スペイン語で「白雪姫」の意)というタイトルが表す通り、グリム童話を題材にしながら闘牛とフラメンコを生み出したスペイン南部アンダルシア地方の土着性と1920年代という時代性の中にひとつの寓話を紡ぎだす。
     土着性とは15世紀の終わり頃まで8世紀にわたって続いたイスラム支配の影響とちょうどその頃ギリシア、中東方面から流入し始めたジプシーがもたらした異文化が混ざり合うことによって醸成されたこの地域独自のものであり、そこに巡業の芸能一座や見世物小屋が娯楽として多くの人々を楽しませていた、ラジオやレコードが大衆化する前の時代を背景として、主人公である闘牛士の娘の数奇な人生の物語が展開する。
    また、音が重要な役割を果たすこの映画ではフラメンコの音楽、すなわちパルマ(手拍子)とカンテ(歌)が効果的に挿入されている。歌の中でもカンテ・ホンド(深い歌)と呼ばれる魂の叫びのような地声の歌が印象的に響く。そして、映画には白雪姫の小人をモチーフにした小人芸人の一座がやはり主人公を助ける役割として登場する。一座の中にはジプシーの踊りを踊る者もいて、こういった演出はやはりスペインの映画ならではであろう。そのほかにも非情な継母の役を演じるベテラン女優マリベル・ベルドゥの役作りのうまさや闘牛シーンでの牛の演技(?)、ひょうきんで哀しい役回りの雄鶏など、見所の多い映画である。色と台詞をなくしたことがこのような細部を際立たせる作用をもたらしている。
     アンダルシアの土着性の中に文化の混交を見出し、主流文化の中では埋没しがちな社会の周縁に生きる人間の生活の諸相を注意深く掬い上げて、現代の寓話を作り出すベルヘル監督の構想は、氏の出身がバスク地方であることと無縁ではないだろう。
    (市橋雄二/2013.12.23)
    映画『ブランカニエベス』は2013年12月7日より新宿武蔵野館ほか全国公開。公式サイトhttp://blancanieves-espacesarou.com
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    昭和時代と言えば1926年から1989年までの60余年にわたる時代である。世界大戦から敗戦そして復興、高度経済成長へと突き進む波瀾万丈の時代だった。
    日本人は概ね貧しく、懸命に働くことで精一杯だった。じぶんが幸せかどうかなどと自問自答する余裕もなく日々の時間が過ぎていった。
    昭和4年生まれの小沢昭一はまさしく昭和の申し子で、敗戦の焼け跡のあっけらかんとするほど何もない貧しさの中にある、希望のようなものを手がかりに生きてきた。小沢さんが著した幾多の書物で繰り返し述べたのは、貧しさが生み出す芸能の力、人びとが前に進もうとする気持ちの尊さだった。
    まもなく小沢さんの1周忌である。筑摩書房から「小沢昭一:写真集 昭和の肖像〈町〉」が発刊された。小沢さんが長年、撮影してきた膨大な写真から人物、風景などを中心に編集部が入念な選定作業をへて編まれただけあって、内容充実で、どっしりとした手応えに満ちた写真集となっている。写真選定など若干参加したので、手前味噌になるのを押さえた物言いになるが、小沢さんも満足されるのではないかと思う。
    どのカットを見ても背後に小沢昭一のまなざしが透徹しており、小沢昭一の心の軌跡が伺われ、どのような思いで町や人々に接し、向かい合っていたのかが、しみじみと分かるのである。
    昭和40年代の中頃から、放浪芸の取材で日本各地を小沢さんと巡ったが、車で移動中にたびたび、小沢さんが「ちょっと、ストップ」というなり車を飛び出しカメラを構えるのだった。当時「話の特集」のカラーグラビア「小沢大写真館」を連載していたこともあり、田んぼの中に立つ看板から、風俗店のまがまがしい看板、町を行く老若男女などなど、小沢昭一的関心、興味に火がつけば、執拗に対象に迫っていった。
    一枚一枚を見ていると、昭和の匂い、街の匂いが ゆらゆらと画面から立ち上がってくる。 光と影の織りなす昭和の肖像がある種の哀惜感を伴い、胸に迫ってくる。
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