2016年1月アーカイブ

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     ロマの社会は、かつて「パトリン(葉っぱの意)」と呼ばれる独特な情報伝達のしくみを持っていた。旅をする一族は、葉っぱや羽、棒切れのような身の回りのものを使って、同じ道を通ってあとからやって来る他の一族に情報を伝えたのだ。ラジオ・パトリンは、ロマ間、あるいはロマと非ロマの間の現代の新しいコミュニケーション手段である。
     ラジオ・パトリンの中心的な事業は将来に向けた汎欧州向けのロマのラジオ・テレビ放送の開発である。元来オランダの非営利団体NEVIPEの一部門としてロマ語と英語の二ヶ国語の機関紙<パトリン>を発行し、1991年から96年までヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアに配布していた。NEVIPEではまたオランダのアムステルダムとスロバキアのプレショフにある拠点が中心となって社会活動や教育事業、ロマの状況の調査などを行ってきた。1992年<パトリン>はラジオ番組としてスタートした。
      2009年以降<パトリン>はアムステルダムの公共テレビ局SALTOによって運営され、独立したロマ語放送としてロマ語、英語ほかの言語で放送されている。ラジオ・パトリンの番組はローカルニュースと国際ニュースの両方をカバーしており、ヨーロッパ、インターナショナル向けの一般放送とロマのジャーナリストや地域の通信社が制作した特定の地域向け放送の二つの系統に分けられる。
      2013年4月からラジオ・パトリンはEBU(欧州放送連合)とEBUロマ・タスクフォースに加盟しており、ロマ語メディアやロマ・ジャーナリスト研修、ロマ文化の保存に関する様々な行事や会合に参加するなど活発に活動している。ロマ社会の代弁者として、ラジオ・パトリンは非ロマの聴衆とも連携し、ヨーロッパの言論機関からの支援をうけながら、EUやアメリカ議会、ヨーロッパ、ロシア、アメリカ、ラテン・アメリカ、オーストアリアのNGOなど世界各地の諸団体と協力関係を築いている。
     ラジオ・パトリンと提携したインターネットラジオに、ウクライナの<ラジオ・チリクロ>(チリクロはロマの言葉で「鳥」の意)があり、ウクライナ(あるいはヨーロッパ)のロマと地元住民の相互理解を促進することを目的にインターネット放送を行なっている。
    (市橋雄二/2016.1.16)
    *各インターネットラジオのURLは
    http://radiopatrin.com  
    http://radiochiriklo.com
    画面上の再生ボタンをクリックするだけで簡単に番組を聴くことができる。いずれのラジオ放送でもコンテンポラリーなロマの音楽を楽しめる。
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    若き日々の青春日記の側面もあり、読みながら己の若き時代を反芻せざるをえない好著である。演劇・演芸評論家、エッセイスト、矢野誠一の近著である「舞台の記憶」(岩波書店)の70年に及ぶ観劇記録の圧倒的なヴォリューム感に驚き、ひれ伏すのみである。
    10代半ばから芝居、寄席に通い出し、以後、途切れることなく演劇、寄席の落語など、東西の映画、海外での体験などが玉手箱のように出てくる。年に200本の観劇生活の中から、特に印象に残ったものを選び、記憶の糸を手繰り寄せ、回想した本著は資料的にも貴重な日本近代芸能史の側面もある。そこから浮かび上がってくるのは高度経済成長時代からひた走る日本社会の風俗・社会史的変遷の記憶であり、矢野誠一の青春時代の悩み・喜びが織り交ぜられ、血肉の通った青春観劇記録になっているところが、類書との違いだろう。
    その守備範囲の無限広大なこと〜新劇、商業演劇、ミュージカル、落語、宝塚、歌舞伎、ポップス等々に及びながら、その筆致にはツボを抑えながら、己の美学の軸をずらすことなく、柔軟に対象に寄り添う暖かさに満ちている。
    1951年、著者が高校生に成り立てに見たジャン・コクトーの「聲」から1997年の「紙屋町さくらホテル」までが収められている。 早熟で、麻布高校の自由な雰囲気で育ち小沢昭一を始めとする仲間たちの影響も受けながら東京で繰り広げられた演劇・芸能の戦後勃興期のただ中にいた矢野誠一が全身で感じ、受け止めた空気感が気持ちよく伝わって、当時の私のことを思い起こしながら、身が熱くなる思いがする。少し遅れきた私のような地方出身者は矢野さんたちの文章を追いかけては東京の空気に染まろうとしていたのかもしれない。
    「舞台の記憶」は、2008年6月より2015年9月まで公益社団法人都民劇場の月報に連載されたもの。
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