映画「天気の子」〜生の実感を掴み取る

  • トップページへ
    前作「君の名は」から3年、期待される中での登場は作者にとっても相当のプレッシャーだったろうが、伸びやかで、奔放なイメージの飛躍は相変わらず切れ味よく飛翔し、新海世界の新たな地平を拓く代表作となった。
    高一の夏、離島から飛び出してきた帆高。生活は困窮し、孤独な日々は続く。心象風景のように東京は連日、雨つづき。そんな中、短い時間だが、晴れ間をつくりだす能力をを持つ少女・陽菜と出会う。次々と奇跡のように晴れ間をつくりだす少女にも、体の変調が現れる。消えて行った少女を救い出す後半の展開は息もつかせぬ緊迫感に包まれると同時に、RADWIMPSの音楽とのコラボが画面に高いヴォルテージをもたらし、稀に見る劇的空間を展開した。
    東京周辺は3年間、降り注いだ雨により、ほとんどが水中に埋没する世界へと変貌する。この回復不能に思える世界にいながら二人の少年少女は、なぜか希望を失わないように思える。地球規模での気候変動は現実のものだが、それとてもざっくり考えれば、水没した東京周辺は数百年以前の関東平野の状態に戻っただけかもしれないのだ。
    歴史的な視座の中に現在の少年少女を生かして、過去と未来を自在に交錯させながら、生の実感を掴み取るという新海誠の試みは一つの到達点に至ったのであろう。
    表現的な成果としては雨の描写が素晴らしい。非常にリアルでたとえは妙だが、黒澤明の「七人の侍」のラストの壮絶な雨中の決戦シーンを思い浮かべてしまった。それほど、雨のひとしずく、ひとしずくが粒立っていたのだった。魂は細部に宿ったのであった。
  • このブログ記事について

    このページは、gypsy-trailsが2019年7月27日 18:15に書いたブログ記事です。

    ひとつ前のブログ記事は「日本社会の岩盤に突き刺さる〜「敗戦後論」加藤典洋 著(ちくま学芸文庫)」です。

    次のブログ記事は「映画「世界の涯ての鼓動」〜原理的な問いと痛切なメッセージ」です。

    最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

    月別 アーカイブ

    ウェブページ

    Powered by Movable Type 4.261