欧州ロマ・サミットの成果とは《ジェレム・ジェレム便り②》

■2008.10.11  欧州ロマ・サミットの成果とは《ジェレム・ジェレム便り②》
○今回の<欧州ロマ・サミット>に関しては、日本のメディアでもネットニュースなどで短く報じられた。そこでは、バローゾ欧州委員長が「あらゆる手段を尽くす」と述べたくだりを紹介し、教育や就職、住宅などに関する支援を約束した(9月17日付産経ニュース)として好意的に伝えている。一方、9月16日付け国際版ヘラルド・トリビューン紙がAP電として伝えた記事は「EU、初めての欧州ロマ・サミットで非難される」という見出しでロマ側の反応を中心に違った見方を示している。
ロマの代表は、イタリア政府が今年6月に発表したロマ人の指紋採取政策(イタリア国内のロマ人集落で暮らすロマ人とその子どもたちから指紋を強制採取するという治安強化のための移民規制の一環)をEUの行政機関として批判声明を出さなかったことに怒りを露にし、強く非難したという。一方で、Open Society Instituteなどの財団を通じて慈善活動を行い、長くロマの人権擁護のためにも闘っている米投資家ジョージ・ソロスが演壇に立ち、イタリア政府への法的措置の必要性を訴えると、ロマ団体から拍手を浴びたという。
今回の会議の目的のひとつは、各国政府関係者、ロマの代表、非政府組織を集めて27カ国のEU加盟国に暮らす約1千万のロマが直面している様々な問題への関心を高めるということだった。この点では一定の成果があったものと思われるが、総論ではなく各論を求め、差別政策への迅速かつ徹底した対応を求めたロマの人々の切実な思いとの間には今なお隔たりがあることを浮き彫りにしたともいえる。
(市橋雄二)

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