■2009.4.15 地底からの響き・・・・舞踊家・田中泯のナレーション・・・・
●12日にNHKスペシャル「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」という番組を見た。
アマゾンの最深部に1万年以上、独自の文化・風習を守り続けているヤノマミ族を150日間同居し、記録したものだ。「森の中、女だけの出産、胎児の胎盤を森に吊るす儀礼、2ヶ月以上続く祝祭、森の精霊が憑依し集団トランス状態で行われるシャーマニズム、集団でのサル狩り、深夜突然始まる男女の踊り、大らかな性、白蟻に食させることで天上に送る埋葬…。そこには、私たちの内なる記憶が呼び覚まされるような世界があった。」(NHKのHPの紹介文から)
ドキュメンタリーとしては情緒的、技術的なカット変わりが気になったが、何よりも被写体の事実の重さが強く印象に残る佳作だった。
だが、私にとっては、この作品は舞踊家・田中泯のナレーションのすばらしさによって今後記憶されるものになったのである。導入部のスタッフタイトルを見過ごし、何の予備知識もなく見ていて、すぐにこのナレーションは誰なのかと気になり始めた。
抑制をきかせながらも、熱い思いがにじみ出る語り口にはいわゆる手馴れたプロの巧者の味わいとは違い、共感に裏づけられた思いがみなぎっていた。それは静謐さと緊迫感が入り混じり、地上を這いずるような語り口だった。
視聴者に語りかけるような親和的なものではなく、宇宙に向かって地底からつぶやくような姿勢がうかがえ、ヤノマミの民が語り部に変身したかのような語り口だった。番組途中から何故か田中泯の声だと確信したが、それはなんの根拠もなく、ただ地底からの響きのような感触・手触りは田中泯の舞踊から受けるものと同一だったからであった。