単細胞戦争映画「ハートロッカー」

「ハートロッカー」が今年のアカデミー賞を取ったと言うので見に行った。イラク、バグダッドでの爆薬処理を任務とする部隊をドキュメンタリー風に描いている。スリルとサスペンスだけは十分だが、この映画はひど過ぎる。この中には、戦争というもの、イラク戦争というものへの見方が一切ない。批評眼とは言わないまでも、なぜ、イラクを舞台にしたのかその理由が分からない。単なるスリル満点映画をめざすのだったら、架空の舞台でも設定すればいいのだ。アメリカ兵の悩みらしきものを、殊勝に描きながら、登場するイラク人は単なる悪役、気味悪いイスラム人として描かれる。この映画を、イラクの人々が見たら、なんというか。
これでは、昔の西部劇と同じだ。ネイティブアメリカンをインディアンとして悪役に仕立て上げ、それを征伐するガンアクションと同線上にある。こんな単細胞映画がアカデミー賞とはあきれてものも言えない。病んでいるとしかいえないアメリカ映画産業である。