復刻CD 小松左京・筒井康隆・星新一AMAZING3の「サウンド・ノヴェル」

  • 日本SF界の三巨人、小松左京、筒井康隆、星新一それぞれの個性を生かしたレコードを制作したいという思いで、日本テレワークの野田昌宏氏の協力を得て実現したサウンド・ノヴェルとも称するシリーズ企画をプロデュースした。
    AMAZING3をシリーズタイトルとして1978年にビクターから発売された。当時、筒井康隆さんのご自宅を訪ねて、相談したり、小松左京さんには大阪での記者発表会やパーティーで親しくさせていただいたことなど忘れがたい思い出だ。そしてこれらが6月に初CDとして復刻された。
    CCF20150725.jpgCCF20150725_2.jpg
    ●この企画のために書き下ろされたスペースロマン。演出・構成など自ら手がけた「宇宙に逝く」はSFの枠を超えたヒューマンな傑作となっている。ジョー・タカハシ中尉を演じる日下武史が素晴らしい。スタジオ ヌエが描いた宇宙母艦も忘れがたい。解説パンフに小松左京自筆の構成台本の写しやSFに寄せる思いを綴った文章、川又千秋氏の解説文がある。イラストは加藤直之(スタジオぬえ)、マークデザインは山藤章二+長友啓典。
    ●A面は短編「バブリング創世記」をレコード化した異色・意欲作で山下洋輔、小山彰太、坂田明らが音楽はもちろん声でも参加している。B面は筒井がこのレコードのために書き下ろした作品で自作朗読である。筒井康隆は俳優としても独特の存在感を持っており、人間が眠る方法を微細に語り、抱腹絶倒の世界を現出している。解説パンフには山下洋輔氏の貴重で、詳細な分析が素晴らしい。とにかく筒井康隆も山下洋輔も生きた伝説だ。イラストレーター:山藤章二、フォトグラファー:芝崎俊雄、デザイナー:長友啓典  野村高志+K2

    CCF20150725_3.jpg
    ●星新一のショート・ショートは底流において江戸落語、小咄に繋がるものがあるとされる。そこで落語との接点に焦点を当てて、寄席のかたちをとりながら星の世界を覗くというのが狙いである。古今亭志ん朝、柳家小三治という最高の噺家が競演するのも興味津々。解説パンフは関容子さんによる『「星寄席」の誕生まで』の裏話が面白く、今や懐かしい。関さんは後に勘三郎に関する優れた業績を残したのも嬉しいこと。寄席文字:橘右近 イラスト/デザイン:和田誠

    以上の3点はジャケットなどのアートワーク、解説パンフの復刻などの点から見ても、復刻作品の見本となるような丁寧で、きちんとした仕事ぶりが嬉しい。それにしても凄い豪華メンバーぞろいのアートワークだ。