パレスチナのジプシー<ドム>の惨状:《ジェレム・ジェレム便り⑤》

■2009.2.4  パレスチナのジプシー<ドム>の惨状:《ジェレム・ジェレム便り⑤》
●イスラエル軍がアメリカ・オバマ新大統領の就任に合わせてパレスチナ自治区ガザへの攻撃を停止した。イスラエル軍は、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスに対し、ガザからイスラエル領に発射されるロケット弾への報復として昨年末攻撃を開始し、空爆に続き地上部隊を侵攻させた。この間のパレスチナ側の死者は1300人、負傷者は5000人を超えた。報道によると死者のうち少なくとも半数は武装勢力に関与しない民間人だという。
実はこのパレスチナ側の被害者の中に西アジアで<ドム>と自称するジプシーの人々が含まれている。エルサレム・ドマリ協会(Domari Society of Jerusalem)の会長アモウン・スリームさんが2009年1月6日付けのメールニュースでこの事態を訴えている。調べたところパレスチナに暮らすジプシーの数はおよそ5000人で、うち2000人はエルサレムに住むとあるので、ガザ地区にも1000人を超える人々がいるものと思われる。
メールニュースのなかでは正確な数は述べられていないが、かなりの死者とそれを上回る負傷者が出ているようで、ただでさえ少数の彼らのコミュニティがまさに滅びようとしている。また、同胞に向かっては自分たちの文化を守り生き延びるためにお互いが団結して助け合わなければならないと呼びかけている。怪我をして頭から血を流す女性や腕と足が吹き飛ばされて横たわる男性など痛ましい写真も添えられている。最後に義捐金の送金先も書かれているが、とにかくまずこの悲惨な事実を多くの人々に知ってもらいたいという静かな叫びだ。
ドマリ協会はインターネットの公式サイトの情報によれば、現会長のスリームさんにより1999年にエルサレムで設立され、パレスチナ自治区に暮らすドマの女性と子供の支援を目的として活動している団体である。最近の活動としては女性の自立支援を促すためのアクセサリーや布製品など手工芸品の教室や子供向けのアラビア語識字教育、また就学児童への学用品の無料配布などを行っている。ドマによるドマのための自助組織と言えるだろう。
自らもドマのスリームさんの文章には、イスラエルやハマスといった固有名詞が一言も出てこない。戦争の理由が問題なのではなく戦争そのものが悲劇なのだ、というメッセージが伝わってくる。
(市橋雄二)

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