■ギャラリー(インド2001篇)

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button126.gif北インドの漂泊・門付けの芸能(2001)

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2001年8月。早朝6時10分デリー空港をたち、南西に600キロ弱にあるジョドプール空港に到着したのがAM8時。この時期はモンスーンの終わりにあたるが、前夜のスコールは強かったようだ。ここから車でタール沙漠に向う。

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沙漠に出る途中、オシアンという小さな町で一服。カレー屋から見た街の様子。日曜雑貨屋、道具修理の店などが立ち並び、活気が溢れている。聖なる牛がのんびりしている。

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美味かったカレー屋。道端のトタン屋根の仮設小屋だが、注文してからすばやく出てくる。左の男がカレー担当で、右の男がフライパンでチャパティを焼く。しかもすこぶる野趣に富んだ味だった。

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北インドではチャパティが多い。日本ではナンが圧倒的に多いがここでは見かけなかった。ナンは小麦粉を水でこねて発酵させ、薄く伸ばしてかまどの内側にはりつけて焼き、やや白い色をしている。チャパティは発酵させないで焼いた薄焼きパンで、色も褐色だ。素朴な味である。そして、厚めにスライスされた付け合せのたまねぎ(皿の右側)とレモンがカレーの辛さを和らげてくれる絶妙のコンビだ。香辛料の複雑な味わいと辛さが口中にひろがる。レモンをしぼり、振りかけたたまねぎにかぶりつく。さらに食欲を増す。1人前100円前後。

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屋根から無造作にはみ出た萱が強烈な陽射しをさえぎってくれる。

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これぞまさに黄金の城砦。沙漠のなかに忽然と現れる。砂漠の都市ジャイサルメールの城砦。延々と続く沙漠を越えてきた旅人には、壮大で荘重な城砦の突然の出現は不思議な呪力を感じさせる。

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ジャイサルメールの街から眺めた城砦。どこから眺めても美しい。ジャイサルメールは1156年にラジプートの子孫ラワル・ジャイサルのより創建され、陸路交通の要衝として栄えたが、海の交易が始まると、その影響で衰退した。インドとパキスタンにまたがるタール沙漠のほぼ中央に位置し、パキスタン国境に近い街である。現在は繁栄した時に建築された寺院群や、複雑な彫刻を施したハヴェーリーと呼ばれる富豪たちの建築が観光客を集めている。

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泥作りの家。芸人村ともいうべき集落は街の一角の斜面にへばりついている。20年ほど前から、観光に力を入れ始めた行政当局の保護政策でつくられたカラーカール・コロニーという名の芸人居住区。郊外から出てきた音楽芸人たち、人形使い、様々な楽器を操る楽士などが居住している。

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芸人村の家。食器を洗う姉妹。ぴかぴかにする。

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日常に使う壷類。

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夕暮れのジャイサルメール。

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ボーパという絵解き芸人が弾く独特の楽器、ラーヴァンハッター。ココナッツの殻でできた小さな胴体に太めのネックを差し、2本の演奏弦と18本ほどの共鳴弦をもつ弓奏楽器である。右に坐っている女性(歌や踊り)と対で演奏する。必ずヴェールを被る。

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ハルモニウム。手こぎ式のオルガンで、歌の伴奏にも欠かせない最もポピュラーなもの。

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地球上に広く分布している金属製の口琴(モールチャング)。

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この地方独特の一弦楽器。ババングという。把手のついた円筒形の胴体の下に羊の皮を張り、その真ん中に1本の弦を張る。弦の先端をT字型の駒に巻き付け、固定しないで手でゆるめたりピンと張ったりしながらバチで弾き、音程に変化をつける。

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芸人達が売り込みに集まった。右からハルモニウム、カルタールそしてドーラクという両面太鼓。カルタールは、2枚1組の長さ20センチほどの堅い長方形の板を使った楽器で、一種のカスタネットである。左右の手に2枚ずつ少し隙間をあけて持ち、手を振るようにすると2枚の木が当って音がでる、指さばきと手首の返しに板自体の重さを利用しながら、カタカタカタと乾いた連続音が出せる。この少年は超絶技巧の持ち主で、何度も舌を巻いた。ドーラクは樽型の両面太鼓で、坐って演奏され、両手を使う。片方がカン、カンという高音、片方がドゥン、ドゥンという低音を出す。

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人形芝居。

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カルベリアというグループに属し、蛇使いや踊りなど門付け芸能を中心に従事する。強烈な色彩の衣装が特徴だ。トニー・ガトリフ監督の映画「ラッチョ・ドローム」(1993年)は自身のルーツであるジプシーがインドから出立し、スペインなどに到達した歴史をドキュメンタリー風に構成した作品だが、導入部で踊ってい女性はカルベリアそのものだった。

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二人の踊り子。

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姉妹。

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さっと現れ、いつのまにかいなくなっていた。

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まなざしが印象的な少女。

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踊るふたり。ロングスカートをなびかせながら回転を繰り返す踊りを見ていると、どうしてもフラメンコを想い起こす。

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典型的な編成のグループ。

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楽団についてきた踊り子。

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蛇使いの笛として知られる吹奏楽器、ビーン。ひょうたんの胴体に2本の管をつけ、1本は演奏用、もう1本が通奏低音が鳴る仕掛けになっている。演奏中、通奏低音が途切れることがないのは、両頬をふいごのようにふくらませて鼻呼吸して、息継ぎなしで吹いているためである。この楽器はプーンギともいう。

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ボーパという絵解きをしながら英雄神の武勇伝などを語り伝える専業芸人。インド北部の観光地には多く見かける。男女2名でやるもの。彼らも門付けをしながら村々を歩く。日本にも各寺院にあった絵解きの源はインドであろう。

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漂泊民ジョーギーはこの先の沙漠のどこかにいる。

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タール沙漠。タール沙漠は、ラージャスターン州の中央を南北に横切るアラヴェリ山脈(標高1000-1500メートル)から西に、パキスタンにまで広がっている。ここも昔に較べると沙漠化が進んでいる。

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1度に2本の笛(ダブルーフルート)を吹く。ムール・サガール村に住む名手。

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沙漠とブッシュ地帯の境目あたりにジョーギーの仮テントはあった。周りに大きな樹木など、遮蔽物がない場所に彼らはテントを張る。灼熱の太陽をさえぎるものがない。彼らは蛇などの危険な動物からの安全を確保するため、先祖以来こうしたところにテントを張るのが伝統だいう。飲み水なども暑さで殺菌できるという。

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強烈な太陽をさえぎるのは毛布のみ。ジョーギーとは蛇つかいを生業にし、漂泊の生活を続け、歌や踊りの門付けなどをする職業集団グループをいう。ジプシーのルーツの1つであると確信させる民だ。

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犬は重要な働き手として大事にされる。彼らはその他、ニワトリを飼っている。

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子供は多い。テントのなかも40度近いが気持ち良さそうに熟睡している。

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沙漠は風が吹きぬける。防風のため、小枝や萱などで工夫している即席かまど。

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蛇使いの笛、ビーンを奏する男。歌う時は、女達は坐って、手を頬に当てながら歌う場合が多い。人間が歌うことを始めたときは、こんな風に声を発したのではないかと思わせるほど、強烈な歌だった。

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ビーンと女たち。ジョーギーの語源は「ヨーガ行者」からくるらしく、シヴァ神を信仰する1宗派の人々を指し、ナート派とも呼ばれる。この他「火葬場のジョーギ」と呼ばれる集団もある。このうち蛇つかいとして知られるサブ・カーストは「ジョーギー・カルベリア」と呼ばれている。シヴァ神は偉大なるヨーガ行者として崇められ、蛇(コブラ)はその象徴である。

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最近は動物保護団体がうるさく蛇はなかなか獲れない。どこかおかしい風潮だ。

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行政機関はジョーギーの定住化政策を何度かこころみたが、行政側の管理体制と束縛を嫌う彼らの生き方がなかなか合わず、定住化は頓挫しているという。。このジョーギーの女性は定住している。

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このあたりはこの種類の犬しか見かけない。足が長くスマートでしなやかな動きだ。

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典型的なジョーギーの女性の髪型。

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ジャイサルメールの民俗博物館に展示されているジョーギーの像。

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観光客の集まるところにボーパあり。

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カマイーチャという丸い胴体の弓奏楽器。演奏する弦の他に共鳴弦がついており、独特の素朴で余韻のある音を発する。今日では、歌の伴奏にはハルモニウムが使われることが多く、カマーイーチャを演奏できる人の数は少なくなっている。演奏できる人は高齢者になっており、将来は見られなくなるのか。

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デリーなどで見かける猿回しはほとんどラジャスターン州から来ている。日本の猿回しも遥か以前にこの辺りからの移動民が東南アジア、中国などを経て、伝わってきたのではないか。この人形はジャイサルメールの古物店で見つけたものだが、猿回しの風俗が興味深い。

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もう1つの猿回し人形。