佐藤花那子さん

■2007.6.27  佐藤花那子さんのこと=
スペイン在住のフラメンコ舞踊家。生きながらにして伝説の人、マヌエル・アグヘタ≪カンタオール(フラメンコの唄い手)。伝統的で純粋なフラメンコの最後にして最大の継承者。≫の妻でもある。彼女の著書「モーロ人は馬に乗って~アンダルシアで舞い、耕し、生きる」(解放出版社2004年)は、ヒターノ(ロマ・ジプシー)である夫のアグヘタとスペイン南部アンダルシア地方の最南端の町、チピオナで家畜や野菜を自給しながら過ごす日常そのものが如何にフラメンコに根を生やしているものかを実感させてくれる稀有の記録である。フラメンコを踊ることは生活そのものであるという彼女の確信、そしてヒターノの本質的な生き方や思考形式を時には過激ながら、したたかなユーモアも交えて語っている。この土地の苛酷な夏の生活など自然への視野も深い。そして自己を内省する目は意外に冷めている。とにかくロマ(ジプシー)の真情やフラメンコの真実を(文字を持たない)ヒターノの内側から彼らの心のヒダをめくるように伝えてくれる実に貴重な証言だと思う。ジプシーに関する著書という意味でも「立ったまま埋めてくれ」(イザベル・フォンセーカ くぼたのぞみ訳 青土社)と比肩しえるものだ。

その佐藤花那子さんがその後の生活ぶりなどのエッセイをSPAZIO65号,66号に寄せている。これらのエッセイにも、さらに土地に根付いた生活からあふれ出るフラメンコへの透徹した洞察力と日本にいる老いた母への思いが交差しており切ない。そして、彼女のフラメンコ舞踏家としての姿勢や夫、マヌエル・アグヘタの肉体化されたフラメンコへの記憶(3日間唄いつづけても同じ歌詞を繰り返すことは絶対にない)について語っている。文字を持たないが、その頭脳のなかには膨大なフラメンコの歌詞が整然とはいっており、それらはヒターノの歴史を物語る図書館でもある。
昨年マドリッドに行った際、滅多に見られない豪華メンバーでのライブがあり、アグヘタはトリで出演していたのだが、どうしようもないスケジュールの都合でアグヘタの唄を聞けなかったことが今でも心残りである。

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