「メインテーマは殺人」〜アンソニー・ホロヴィッツ

2018年に翻訳刊行された「カササギ殺人事件」(創元推理文庫)は年間ベストテン7冠達成という快挙を成し遂げたことで著者の名前は忘れられないものとなった。その面白さは単なる推理小説というジャンルを超えたものであり、読み物としても逸品であった。今回の「メインテーマは殺人」も前作に劣らずの快作となった。  元刑事のダ……続きを読む

「熱源」川越宗一著〜スケール豊かなアイヌ民族誌

レニングラード大学で民族学を学んだロシア人女性伍長クルニコワが1941年、ふとしたことから耳にした1904年の録音から流れてきたアイヌの歌と琴の音から物語は始まる。この導入部はラストの大詰めに連関するのだが、巧みな構成だ。 大きな筋は、アイヌとポーランドの二人の青年のうねるような生きた歴史そのものだ。 樺太(サハリン)……続きを読む

映画「パラサイト 半地下の家族」〜疾走感!怒涛のラスト

 一家4人全員失業中のキム家族。日の光も乏しく、電波もままならぬ半地下生活。事業に何度も失敗する楽天的な父キム・ギテク。元ハンマー投げのメダリスト、妻チャン・へジン。大学受験に失敗し続ける長男ギウ。美大を目指すが上手くいかない娘ギジョン。内職で日々をしのぐ彼らの生活の半地下生活の有様の描写は生々しく、匂いまでが届くよ……続きを読む

冷徹であり、相対化する明快な分析〜「21Lessons」:ユヴァル・ノア・ハラリ著

「21Lessons     21世紀の人類のための二十一の思考」と題されている本書は、イスラエルの歴史学者・哲学者ユヴァル・ノア・ハラリにより、『サピエンス全史ー文明の構造と人類の幸福』と『ホモ・デウスーテクノロジーとサピエンスの未来』に続いて発表されたものである。共に世界的なベストセラーになり……続きを読む

記録映画「草間彌生∞INFINITY」〜内的衝動の噴出力

草間彌生の作品には巨大な絵画、彫刻、パフォーマンスなど多岐に渡り、水玉と網模様で覆われた作品やかぼちゃなどなど独自の世界観を持っている。  この世界的に注目されている前衛芸術家の半生を通して表現とは何か、美とは何か、など根源的な問いかけに迫られるドキュメンタリー映画である。  1957年に渡米し、日本人と……続きを読む