記録映画「草間彌生∞INFINITY」〜内的衝動の噴出力

草間彌生の作品には巨大な絵画、彫刻、パフォーマンスなど多岐に渡り、水玉と網模様で覆われた作品やかぼちゃなどなど独自の世界観を持っている。

 この世界的に注目されている前衛芸術家の半生を通して表現とは何か、美とは何か、など根源的な問いかけに迫られるドキュメンタリー映画である。

 1957年に渡米し、日本人として、女性としてまだまだ偏見の残るアメリカ社会で、様々な試行錯誤、実験的試みを飽きることなく、展開しながら、人間関係の軋轢などで深く傷つきながらも、芸術的な表現領域を拡大し、既成の芸術的概念に体当たりし続けた驚くべきエネルギーの発露はどこからくるのか。様々な映像資料と証言を駆使しながら、浮かび上がってくる草間の苦難に満ちた米国時代の空気感が印象的である。

90年代初頭から草間の作品に触れて以来、草間に傾倒し続けてきた米国の女性監督ヘザー・レンズが2004年以来制作に入ったという。

草間が渡米したころは、女性芸術家への風当たりは強く正当な評価はされないことが多かった。しかしながら、草間は強引なほどの自己アピールを繰り返し、その都度、跳ね返され強い精神的打撃を受け続ける。反戦運動の裸のパフォーマンスがスキャンダラスに取り上げられたりする。そうした草間がようやく正当な評価を得るのは90年前後からで、その後の圧倒的な存在感は正しく世界的な規模に達する。

最近は入院している病院の脇にアトリエを設けて作品作りに没頭しているという。

この映画を見てつくづく思うのは、ジャンルに関係なく、絵画・音楽・小説・詩などなど・・人が何かを表現する行為というものは、表現する人間の内的衝動の噴出力がいかに自律的であり、強く起きているかが、その作品を受け止める人に訴える力があるかどうかのキーポイントということである。

その意味では、草間彌生が夢中になりながら、表現しようとしている眼差しに見られるある種の狂気めいた輝きはこの映像で確認できたのである。

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