《ジェレム・ジェレム便りNo.59》英国COVID-19事情異聞〜興行師たちの叫び

英国大蔵大臣、下院議員および地方議会議員への要望書/2020.4.8

各位

 今般の事業者向け補償制度の対象に私たちの業界を含めていただきたく急ぎ筆を取ります。

 私は興行師ですが、常設の会場を持たない移動遊園地や巡業サーカスを営んでいるため、飲食や娯楽などの事業者向けの支援、つまり25,000ポンド(約330万円)の助成金*1の対象になっていません。私たち移動遊園地や巡業サーカスの従事者は今や消滅の危機に瀕しています。野外イベント、フェスティバル、祭りの縁日やプライベートな行事などの場がなくなり、収入の道が途絶えてしまっているのです。従業員への給料や社会保障費を支払っているにもかかわらず、私たちの存在が見過ごされているのではないかと危惧しています。このままでは、私のビジネスのみならず業界全体が壊滅してしまいます。

 加えて、私のビジネスは季節労働です。他の多くのビジネスは秋までには正常に戻るとしても、私は来年の春まで収入を得ることができません。5ヶ月間で一年の稼ぎを得るのですが、その5ヶ月間が閉ざされてしまうのです。多くの独立系の興行師たちは来週から仕事を閉め、何千人もの従業員が一時帰休となります。一部にはこだわって残る者もいるでしょうが、多くは二度と戻ってこないでしょう。

 実は、私たち興行の世界にはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)と闘う政府の政策を支援する余地があります。それは運転手や発電機などの機材、そして専門知識を提供することです。しかし、もし私たちの業界がこの先2週間持ちこたえることができなければ、それも叶いません。

 私は、事業を継続し従業員の雇用を維持していくために、貴殿らが議会において事業者支援策に常設施設(課税評価対象の不動産)を使用しない事業者を含めることについて発議をして下さるよう請願します。そしてまた、私たちには国家、政府、そして医療関連従事者に貢献する用意があることを多く人々に知らしめてください。それは、これまでも二度の世界大戦期など国家の緊急事態に際して興行師たちがおこなってきたことです。

 私たちが自らの責務を果たすことができますよう迅速なご対応をよろしくお願い申し上げます。

ジョー・マーサー

英国興行師組合(The Showmen’s Guild of Great Britain)*2事務局長

*1)英国の小売・飲食・娯楽事業者向けCOVID-19補償制度のうち助成金については以下の通り取り定められている。「課税評価額15,000ポンド未満の物件に入居する事業者に10,000ポンドを、また同評価額が15,000超50,000ポンド未満の物件に入居する事業者に対して25,000ポンドを支給する。」(「新型コロナウイルス感染症に対する英国政府の主な企業・雇用関連対策」日本貿易振興機構(ジェトロ)ロンドン事務所作成資料)

*2) 英国のニュースサイト“The Travellers’ Times”によると、ダービーシャー・ジプシー連帯グループが当組合の運動の支持を表明している。また、日本においても同種の組合組織「日本仮設興行協同組合」が存在する。戦後国内各地のサーカス団や見世物小屋一座を束ねて活発に活動したが、近年は会員の廃業が相次ぎ、その勢いは衰えているのが現状である。

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