「作業員日誌 イチエフの真実、 ふくしま原発9年間の記録」  片山夏子著

今のこの時期に、この本を読み続けることはちょっと辛い面もあったが、結局、読み通さざるを得なかった。それだけのものが、この本の中には詰まっていたとしか言いようがない。廃炉作業員たちの体験した日々の苛烈な思いは、今の地球上の人々にも自分自身の日々感じる思いに重なってくるからである。

 2011年8月から2019年10月にかけて東京新聞に連載された「ふくしま作業員日誌」に大幅加筆された。「・・ 瞬間、瞬間を生きた作業員の記録となっていればと思う。」という著者の想いは十分に達成されており、人間の息吹がほとばしる貴重な証言集であり、聞き書き集でもある。

 2011年3月11日に起きた東日本大震災により引き起こされた東京電力福島第1原発のメルトダウンによる一連の恐怖の連鎖。そこに集まった作業員たちの手記、インタビューで構成された。     

 過酷な日常の作業の詳細が語られており、その語り口が素朴で、飾り気なく、率直でありながら、言葉の端々から、それまでの生きてきた歴史、作業参加に至る心模様の変化、残してきた家族への思い、現場の細部の様子、放射能、汚染水の恐怖などがぎっしり詰まっている。    手記の後には筆者、片山夏子が本人と話したインタビューや当時の話題や問題点なのが綴られるという構成になっている。これらのインタビューが通り一遍のものではなく、作業員たちとの9年間に及ぶ人間味あふれる付き合いにまで至るほど濃密なものであることが、この著を類書を超える存在にしている。著者の驚異的な持続力とジャーナリスト魂に脱帽である。

 言ってみれば、日本列島に生きる庶民の基層に根ざした聞書集とも言える。そこからは人々のそれぞれの庶民史が伺われ、家族のあり方、肉親の思い、親子関係、郷土への思い、労働観などが浮かび上がってくる。そして、原発のメルトダウンによるこれからの気の遠くなるような作業はこれからもこのような庶民によってしか、成し遂げられないことを知らしめてくれるのがこの本だった。

追記。宮本常一の名著「忘れられた日本人」を思い出した。聞き書き集という意味でも、東日本大震災の貴重な資料として後世にまで残ってもらいたいものだ。(朝日新聞出版)

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