2012年12月アーカイブ

小沢昭一さんを偲ぶ

  • トップページへ

    小沢昭一さんが12月10日に亡くなってから、14,15日の通夜、告別式に忙殺され心の余裕がないままここ数日が過ぎた。体調の深刻さを知るにつけ、覚悟はしていたが、亡くなってからの喪失感は日々増すばかりである。40年余前に、小沢さんの処女著作「私は河原乞食・考」を読み、衝撃を受け、思わず小沢さんに連絡を取りレコードにしたいと申し込んでからの疾風怒涛のような日本列島の旅の断片が次から次へと思い起こされる。いずれ落ち着いてから小沢さんについての文を記すだろうが、ここはレコード「ドキュメント日本の放浪芸」シリーズ22枚のCD化の際に書き記した拙文を再録したい。

    「日本の放浪芸」を制作して(パンフレットより)

    『俳優という芸能の実演者の立場と、それとは本来的に矛盾する芸能探索者という立場が奇跡的に統一された世界が「日本の放浪芸」であった。それは小沢昭一のやむにやまれぬ思いに駆られた個人的な営為であり、自分が属する芸能の社会の血筋をたどる長い旅だった。録音に残された、幾多の、今は亡き放浪諸芸の人々と小沢との会話を聞いていると、互いに深くつながった仲間同士として交わされた、その時々のまなざしの優しさ、柔らかさがよみがえる。日本の街や道でひそやかに、時には大胆に闊歩してきた彼らは小沢昭一に巡り合い、それぞれの思いを託したのだ。中世以来、営々と日本各地で続いていた放浪芸の殆どは二十世紀の中で滅びたが、その担い手たちの諸芸能と彼らが背負った哀切な個人史の一端がCD復刻によってよみがえり、二十一世紀に向けての手がかりを与えてくれるような予感がする。』(1999年)

  • トップページへ
    プラハのルドルフィヌム・コンサート・ホールはヨーロッパにおけるクラシック音楽の殿堂のひとつで、毎年開催される<プラハの春音楽祭>で有名だ。この権威あるホールは誰にでも開かれているわけではない。このたびロマ(ジプシー)の音楽家で構成されるオーケストラがステージに上がったことは画期的な出来事だった。
    国際ロマ・スィンティ・フィルハーモニー・オーケストラは、ルドルフィヌム内にあるドヴォルザーク・ホールで最後のリハーサルをおこなっていた。チェコ出身のチェロ奏者の隣にハンガリーのハープ奏者が座るという具合で、ほぼすべてのメンバーが少数民族ロマである。チャールダーシュやジャンゴ・ラインハルトのジプシー・ジャズではなく、クラシック音楽をジプシーのセンスで演奏する。記者はリハーサルの合間にコソボのプリシュティナ出身のヴァイオリン奏者デヴィッド・ブバニ氏に聞いた。この夜、ロマ・スィンティ・オーケストラは『アウシュヴィッツに捧げるレクイエム』という曲を演奏することになっている。
    「多くの人が知っているタイプのジプシー音楽を演奏するのではありません。私たちはクラシック音楽の演奏家でもあって、バッハやモーツァルト、ドビュッシーも演奏するのです。もちろんジプシー音楽も演奏しますが、今回の目的はロマやスィンティ、ジプシーの人々も戦争の犠牲になったということを伝えることです。」
    『アウシュヴィッツに捧げるレクイエム』はスイス生まれでオランダ在住のロマの作曲家ロジャー・モレノによって書かれた。1998年に初めて訪れたアウシュヴィッツで精神的にショックを受け、作曲のスランプに陥ったという。
    モレノ氏は言う。「この曲はユダヤ人、ロマ、ポーランド人などアウシュヴィッツの門をくぐったすべての犠牲者に捧げるものです。この地で亡くなった人々はユダヤ人であろうがなかろうか、ジプシーであろうがなかろうが皆同じ舟に乗せられていたのです。そこにはなんの違いもありません。彼らは皆同じように死んでいったのです。すべての人々のために記念碑を作ろうではありませんか。この曲にできることは限られていますが、この世界に平和と、宗教や国家の間の争いには寛容をもたらしてくれることを願っています。」
    今年初めのアムステルダムでの初演以来、『アウュヴィッツに捧げるレクイエム』はオランダのティルブルフのあと今回プラハとブダペストで演奏され、さらにフランクフルト、ブカレスト、クラクフでも演奏会が予定されている。どの土地でもロマ・オーケストラは地元の合唱団と共演しているが、これはロマと非ロマの人々を隔てている目に見えない障壁に対する象徴的な挑戦でもある。
    今回のコンサートは欧州連合(EU)とドイツの<記憶、責任と未来>基金が支援するプロジェクトに含まれる他のイベントとも連携している。プラハでの運営を担当するチェコのNGO団体<スロヴォ21>のイエトゥカ・ユルコヴァさんは言う。「私たちはロマの人々は、普段メディアを通して目にする姿とは違うということを示したいと思っています。チェコ国内では最も貧しく、最も問題の多い住民であるというように言われることが普通ですが、ほんとうは技芸に優れた偉大な人々であるということも伝えていきたいのです。チェコのクラシック音楽界は保守的だといわれます。ですから、国で最も権威のある演奏会場にロマの音楽家が出るのは極めて珍しいことです。そういうこともあって、1200枚のチケットはすべて無料になりました。主催者がジプシー・オーケストラのコンサートでチケットが売れ残ることを心配したのです。」
    このことはロマに対する根深い偏見を克服しようとする人々が直面している試練の大きさを物語っている。
    (市橋雄二/2012.11.27)
  • このアーカイブについて

    このページには、2012年12月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

    前のアーカイブは2012年11月です。

    次のアーカイブは2013年1月です。

    最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

    月別 アーカイブ

    ウェブページ

    Powered by Movable Type 4.261