最近の欧州のジプシー(ロマ)の状況

■2008.6.03  最近の欧州のジプシー(ロマ)の状況
○最近の朝日新聞に2回ほどジプシー(ロマ)に関する記事が出た。こうしたジプシー(ロマ)関連の記事の内容は彼らが欧州において抑圧されている状況についてのものが多く、取り上げ方という面ではやや画一的である。とはいえ、内容はそれほど間違ったものではなく、むしろジプシー(ロマ)の立場に配慮したものであるが掘り下げ方がやや不満である。。
欧州では1989年のベルリンの壁、崩壊後に、旧東欧やバルカン半島から大量のジプシー(ロマ)が西欧に流入しはじめ、その後のユーゴスラビア解体もそれらの流れを加速させた。その後20年近く経過して旧東欧の多くの国々がEUに加盟し、旧ユーゴもそれなりに安定しはじめたとして、仏、伊、独などのEU諸国が東方へジプシー(ロマ)を送還させる動きが活発化してきた。EU各国も内部にそれぞれ格差・移民問題をかかえており、少しでも不法滞在者を帰還させたい本音をかくさない。受け入れる側からセルビアの事情、送り出す側としてフランス、サルコジ政権の不法移民の強制送還そしてイタリアのベルルスコーニ新政権の移民規制強化案などが骨子である。
大きな流れは分かるが、実際に不法滞在者とされるジプシー(ロマ)の人びとの生の声が聞こえてこない。かれらに直に取材することの困難さはあるが、記事にでる内容はだいたい行政サイドの意見、支援活動、人権擁護団体のひとびとの意見で構成されている。それぞれの見解が要領よくまとめられており、分かりやすいのだが、何となく物足りないのだ。記事から記者が人間としてなにを感じているのか伝わってこない。当事者であるジプシー(ロマ)の人びとに直接取材していないのだ。ロマ人のなかにも様々な階層・境遇・職業があるはずなのに、彼らの肉声が聞こえてこない。もどかしく感じる所以だ。
1989年の大量移住・流入以前のはるか昔、数百年にわたりジプシー(ロマ)の人びとは西欧・南欧・北欧・ロシアなどに分布してきた歴史がある。
西欧の音楽・舞踊などに分野に限っても、ジプシー(ロマ)の人びとが従来の西欧文化にもたらした豊穣な実りは明白であり、それらの影響がなかったならば、今の文化は貧弱なものになっていただろう。日常生活に深く浸透しているだけに、あらためて考えることをしないほどだ。
こうしたジプシー(ロマ)の人びとがはたしてきた積極的な実りの面にも目を配った報道がないと、これらの記事を読み続ける読者にはゆがんだイメージばかりが増幅されていく。
旧ユーゴのなかのマケドニアに行ったとき、これらの問題の一端をみたが、様々な矛盾を生きながらも、生きることの基本をきちんと見せてもらった思いが強い。差別、排斥、不法などだけでは語れないジプシー(ロマ)の多様で、したたかな生き方にふれた報道が増えて欲しい。

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