仏教徒になったジプシー:《ジェレム・ジェレム便り④》

■2008.12.30  仏教徒になったジプシー:ハンガリーのジプシーとユーロブディズム(ヨーロッパ仏教)《ジェレム・ジェレム便り④》
○今回は、ハンガリーで仏教に入信するジプシーが増えているというニュースを紹介しよう。
ニュースの発信源はFriends of Western Buddhist Order(FWBO)(西洋仏教僧団友の会)というイギリス発祥の仏教徒組織である。まず、この団体は1967年イギリス人僧侶サンガラクシタ、本名デニス・フィリップ・エドワード・イングウッドによって始められ、宗派にとらわれず、現代に適した形で仏教の教えを実践することを旨とする。現在インドを含む20ヶ国以上に活動拠点を持ち、ユーロ・ブディズム(ヨーロッパ仏教)の中心的存在となっている。
FWBOを日本で最初に紹介されたのは筆者も知己であった故島岩(しまいわお)氏である。興味のある方は『聖者たちのインド』島岩、坂田貞二編(2000,春秋社)の第6章「サンガラクシタとユーロブディズムの成立」を参照されたい。また、同組織のインターネット上の公式サイト」では、日々の活動の最新情報を見ることができる。
もうひとつ背景として、インドの不可触民解放運動の指導者アンベードカル(1891-1956)に触れなければならない。アンベードカルは不可触民の出身ながら弁護士として活躍する一方反カースト運動に身を挺し、インド独立後はネルー内閣の法務大臣に就きインド憲法の草案を作成したほか、仏教に改宗して新仏教を説き、近代インドにおける仏教革新運動の元となったことで知られる。(詳しくは『アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール著、山際素男訳(2005,光文社新書)を参照されたい。)
さて、ニュースの伝えるところによると、4年ほど前にハンガリーのジプシーのグループがFWBOに連絡をしてきたという。彼らはアンベードカルのことを知りとても感銘を受けるとともにインドの不可触民とのつながりを感じ、アンベードカルの社会改革へのメッセージはそのまま自分たちに当てはまると感じたという。
そこから交流が始まり、FWBOスタッフはハンガリーを訪れ、仏教徒となったジプシーのグループはイギリスとインドを訪問した。ハンガリーのジプシーはFWBOの活動を理解するのに時間がかかったとも述べている。なぜならヨーロッパの仏教といえば白人の知識人たちのものという先入観があったためだ。ところがFWBOの人々はこれまでのハンガリーの仏教徒とは違い、ジプシーの人々が直面している社会問題に真剣に向き合ってくれたのだという。
ジプシーが出立したあと13世紀初頭にインドで仏教が滅びてから約750年。不可触民と外国人の再解釈を通して現代性、普遍性を獲得した新しい仏教の姿は、日本にいるとなかなか見えてこない。
(市橋雄二)

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