《ジェレム・ジェレム便りNo.52》イタリア・サーカスの星モイラ・オルフェイ逝く

2015年11月15日、モイラ・オルフェイが亡くなった。イタリアンジプシー(スィンティ)が生んだスターの一人で、大サーカス団のオーナーであり、映画女優としても活躍した。
サーカス団<オルフェイ・サーカス>の家に生まれ、イタリアにおけるサーカスのシンボルとなって世界的な名声を得た。モイラ自身のサーカス団<モイラ・オルフェイ・サーカス>は1960年に設立された。
モイラはバイク乗り、ブランコ曲芸師、アクロバット、象つかい、ハトの調教などさまざまな役をこなす。モイラの派手なイメージは自身の快活な性格を反映している。名前をミランダからモイラに変えるよう勧めたのはイタリアの映画プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスだった。それ以来、太いアイラインを引いた目を特徴とするメイク、明るい色の口紅、唇の上のほくろ、ターバンに巻かれた髪というモイラのイメージが固まった。サーカスが行く町では必ずこの絵が宣伝用の看板に描かれ、モイラはイタリアで最も知られる顔になった。
ほとんど偶然だったが、モイラは映画女優にもなった。コメディーからソード&サンダル映画(1960年代に製作されていた古代の剣闘士を題材にしたイタリアの低予算娯楽映画)まで40以上の映画に出演し、もしモイラが演技を学んでいたら、ソフィア・ローレンと同じような名優になっていただろうと言われた。モイラの両親はリッカルド・オルフェイとヴィオレッタ・アラータという名で、ウォルター・ノネスと結婚し、二人の子供ステファノとララをもうけた。モイラ・オルフェイは2006年イタリア南部の町ジョイオーザ・イオーニカでの興行中に虚血性発作に倒れ、治療を続けていたが、2015年11月15日北部の町ブレシアで亡くなった。享年83。
(市橋雄二/2015.11.22)