会は、桂吉坊(上方落語)の「天王寺詣り」から始まった。切れ味のいい口跡の語りから、天王寺境内の大道芸などが活写されたが、その中でも「のぞきからくり」の掛け合い唄は懐かしかった。放浪芸取材で小沢さんとマイクを差し出しながら、聞いた節が見事に再現されていた。
次はスタンダップコメディの松元ヒロ。場内を爆笑の渦に巻き込み、テレビでは絶対できない禁句連発の時事風刺は強烈で、解放感すら感じた。もと、「ザ・ニュースペーパー」のメンバーから1998年に独立してからの20年に渡る研鑽ぶりが感じられ、芸人魂に満ちた芸人として今後も注目だ。
そして玉川奈々福の「浪花節更紗」。彼女が出て来ただけで、舞台が華やぐ。花があるのがいい。小沢さんや桂米朝の師匠ともいうべき正岡容原作の演題で、奈々福の節回しと語り口が自在に交互し、運びに余裕があり、寄席芸、語り物の面白さを堪能した。特筆すべきは、曲師の沢村豊子との掛け合いの妙である。沢村の三味線は名人芸の域にあり、あの音色の小気味良さは絶品だ。最後は、矢野誠一さんが小沢さんなりを語り、楽しく、懐かしい一夜が過ぎていった。