「真夏の夜のジャズ」〜アメリカ文化の圧倒的な果実

音楽ドキュメンタリーの記念碑的・伝説的作品であり、ジャズファンにとっては、幾多の名盤で繰り返し愛聴してきた、綺羅星のごとくの名プレイヤーの若き表情に触れられる奇跡的なシーンの連続する映画である。

アメリカ・ジャズ界最大のフェステバル「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」の第5回(1958年)の記録。日本公開は1960年。今回2020年4Kの映像でリバイバル公開された。当時、学生だったが、この映画には痛く感動して、5~6回立て続けに劇場に通った記憶がある。当然のごとくモダンジャズにハマり、吉祥寺の「ファンキー」というジャズ喫茶の常連になった。今回久しぶりに見て、懐かしさに時間を忘れたが、改めて60年という時間を超えても、さらに強く印象を濃くしたシーンを2~3上げたい。

 ①チコ・ハミルトン・クインテットのリハーサル・シーン。

合間なのだろうか?チェロのフレッド・カッツがタバコを燻らせながら奏でるバッハの無伴奏チェロ組曲のシーンは美しく引きつけられる。カッツはパブロ・カザルスに師事し、ナショナル交響楽団のチェリストとして活躍した経歴がある。難曲が自在に弾き込まれている。

 ②チコ・ハミルトン・クインテットの「ブルーサンズ」演奏シーン。エリック・ドルフィのフルートが素晴らしい。死の数年前の精悍な、若きエリック・ドルフィの顔がアップされる。

 ③サッチモとジャックティーガーデンの掛け合い「ロッキン・チェア」

 人生の末路にいる老人が互いに、軽口を叩き合いながら、しみじみとした哀歓を漂わせる絶唱。トロンボーンのジャックティーガーデンの歌がサッチモとハモるシーンは見もの。

 ④マヘリア・ジャクソンのゴスペルソング。

ラストの「主の祈り」をはじめ、どれも圧倒的な名唱。彼女の歌の根本はポップス、ジャズ、クラシック、歌謡曲、民謡などのジャンルを超えたところにあるとしか思えない。監督バード・スターンは当時、28歳の写真家で、初めてのムービーだったが、マヘリア・ジャクソンをラストに持ってきたセンスなどには脱帽。

他にもセロニアス・モンク、チャック・ベリー、アニタ・オデイ、ジェリー・マリガン、マックス・ローチなどなど、圧倒的な顔ぶれがそこかしこに見えるから、目が離せない。そして当時のアメリカの若者の表情、服装、振る舞いなどからアメリカ文化なるものが垣間見えるのが面白い。60年後のアメリカの現実、日本の現実を眺めるとめまいがする。

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