圧倒的な歌唱表現!!:中島みゆきコンサートツァー 2010

3年ぶりの最新アルバム「真夜中の動物園」リリースを機に行われている中島みゆきのコンサートに久しぶりに行った。「夜会」シリーズの初期の数回を見て以来だから、ほぼ20年ぶりの生ステージだ。この間、彼女のCDはほぼすべて聞いてきたが、やはり生の舞台でみる中島みゆきはすばらしい。
選曲もよかった。最新アルバム「真夜中の動物園」から4曲、そして「二隻の舟」「しあわせ芝居」「nobody is right」「時代」「悪女」「たかが愛」などを交えて全部で17曲。
 特に「二隻の舟」「時代」は名曲の誉れ高いが、実際に生で目にする機会は滅多にないと思われたので望外の幸せだった。特に「二隻の舟」は「夜会」のステージで初めて聞いて以来、CDで聞くたびに、あのドラマチックな表現に感嘆し続けてきただけに感無量だった。
 すべての曲に満足したのだが、この夜の最大の聞きどころは新曲「鷹の歌」(「真夜中の動物園」に収録)だったのではないか。
 「あなたは杖をついて ゆっくりと歩いてきた 見てはいけないようで 私の視線はたじろいた・・・・」とただならぬ気配の詞章からはじまり、鷹と呼ばれていた人のまなざしに勇気、永遠、道程そして希望を見いだすという内容だ。
中島みゆき独特の抽象と具体、夢と現実の間を自在に行き来しながら劇的高揚感のなかに「生きること」の意味を問い続ける姿勢を打ち出した表現世界である。新たな名曲の誕生であろう。
中島みゆきは今や単なる歌手という存在を遥かに越えた地平にいるような気がする。その詩(詞)の文学性・革新性、微妙な繊細さと爆発的な激情を自在に駆使する歌唱力、舞台での演技力等々・・・その訴求力の強さから考えても現代日本のシャーマンのような存在ではないかと思ったりするのだ。何故か「女王 卑弥呼」を連想する。
 ラストは「時代」で締め、 アンコールは「悪女」、「たかが愛」(「パラダイス・カフェ」より)という構成。ほぼ満足したコンサートだったが、「歌姫」を聞ければ・・・ということは贅沢というものだろう。
11月25日 東京国際フォーラム ホールA。