ソニア・ガンディーへの公開書簡~《 ジェレム・ジェレム便り⑯》

インドの元首相インディラ・ガンディーの生まれた11月19日に、コソボのロマ出身のジャーナリストで詩人としても評価の高いバイラム・ハリティ氏がインド国民会議総裁ソニア・ガンディーに宛てた公開書簡を発表した。
ソニア・ガンディーは、インディラ・ガンディーの息子ラジーブ・ガンディーの妻であり、夫の死後1997年政界入りした。イタリア人でイギリス留学時代にラジーブと知り合い結婚。数奇な運命をたどった人物として知られ、その美貌もあってか、今もインドでの人気は高い。なお、名前が同じなので混乱しがちだが、インディラ・ガンディーはインド独立の父マハトマ・ガンディーとは血縁はなく、インドの初代首相ジャワハルラール・ネルーの娘である。
『ロマ報道情報局の代表として、哀悼の意とともに今は亡きインディラ・ガンディー女史の誕生日のお祝いを申し上げます。私には、ヨーロッパにいる1200万人とも1500万人とも言われるロマ・コミュニティー出身のロマとして、インドの元首相インディラ・ガンディー女史の誕生日を祝う理由があります。そしてこの機にあなた様に是非思い出していただきたいことがあります。女史は1978年にチャンディガルで開催された第一回ロマ・フェスティバルでこうおっしゃいました。
「 あなたがたを母国にお迎えすることができたことを、そしてあなたがたが世界でもっとも偉大なインドのディアスポラ(離散民)であることをうれしく思います。」
1983年に開かれた二回目のロマ・フェスティバルでも、女史はロマを言語的、歴史的、文化的、民族的に見てインドの少数民族であることを正式に認定する用意がある、と述べたのです。しかしながら、女史の死によってインド離散民に対するこの重大な責務の実現は不可能になってしまいました。さらに不運にもあなたの夫であるラジーブ・ガンディー氏の死によって、ロマ民族がヨーロッパや世界各地に離散したインドのディアスポラであるとして認定される機会を逸してしまいました。
是非ともお知らせしたいことは、インディラとラジーブの亡き後、ロマ・コミュニティーが世界に離散したインド人であると認定する事案を取り上げる政治家がいないということです。
インディラ・ガンディーは今も多くのロマの心の中に生き続けています。この先もずっとそうです。女史に栄光あれ。 バイラム・ハリティ』
  ロマのインド起源については、特にヨーロッパにおいて、地元での排斥を恐れて声高に主張するロマは少ないという説もあるが、このような記事からはインドとの絆を胸に抱いているロマが多いことがうかがえる。(市橋雄二 2010.11.27)