《ジェレム・ジェレム便りNo.48》フラメンコとジプシーミュージックの祭典

この4月3日から5日まで今年2年目のジョードプル・フラメンコ・ジプシー・フェスティバルが開かれ、地元ラージャスターンとフラメンコの音楽と踊りを演じる35組のアーティストが集まった。

フェスティバルの主催はメヘラーンガル博物館基金、在インド・スペイン大使館とカンテ・デ・ラス・ミナス(フラメンコ・フェスティバル)。
初日、ガムシャイ・カーン率いるラージャスターンのマンガニヤール楽団が500年の歴史を誇るメヘラーンガル城のモーティー・マハル(真珠の間)に登場し、オープニングを飾った。楽団はカマイチャー(弓奏楽器)、モールチャング(口琴)、カルタール(カスタネット)の音で古の空間を満たして、聴衆を魅了した。最後に「マスト・カランダル」が演奏されると、人々は待ってましたとばかりに大いに喜んだ。メイン・ステージは、ジャイプルを拠点とするフォーク・フュージョンバンド<ラージャスターン・ルーツ>を皮切りに、フラメンコ・ダンサーのカレン・ルーゴ、フラメンコ歌手ナイケ・ポンセ、バイオリン奏者ビクトル・グアディアナ、ドラムのイスラエル・バレラが出演した。メキシコ生まれのカレンは、「ジプシーの家系に生まれたが、ジプシーとは生き方そのものであり、自分のライフスタイルもジプシーに近い」と自分自身を語った。ステージ上のカレンはその美しさがどの表現においても際立ち、官能的でありながら筋肉美と女性美の絶妙なバランスを見せた。

夜の最後の公演は、フラメンコ・ピアニストのチャノ・ドミンゲス、フラメンコ・ダンサーのダニエル・ナバーロ、ベース奏者ハビエル・コリーナらが登場した。終演後、チャノ・ドミンゲス氏が感想を述べた。「ラージャスターンのジプシー・ミュージシャンと共演しているという事実がうれしい。今年はさらに近く感じました。毎年進歩しているので、このままフェスティバルを続けていけば、何か面白いことが作り出せそうな気がしています。」ドミンゲス氏は55才、去年の2月に亡くなったフラメンコ・ギターの巨匠パコ・デ・ルシアとも共演した経験を持つ。「彼は長年多くのミュージシャンに影響を与えてきました。ジャズとフラメンコを融合させて新しい音楽を作ろうとしました。それによって、私のようなミュージシャンに可能性を与えてくれたのです。」
初日はトルコからやってきたベルク・グルマンとグルカン・オズカンの楽団、シャクール・カーン率いる地元のランガ楽団をのぞいてほぼすべてのアーティストがステージにあがった。フェスティバルの実行委員長ロベルト・ニエッドゥ氏はイタリアの出身でここ20年ジョードプルに暮らす。「今年はフラメンコ色の強かった去年と違ってジャズ色が強い内容となりました。来年はラテン・アメリカの音楽に焦点を当ててみたいと思っています。」

フェスティバルは異なる文化やアイデア、様式が溶け合う場。しかし一方で、ランガの歌手がこんな不満を口にした。「ここには自由がないんです。私たちは外国のミュージシャンに合わせて演奏することが求められます。時には聴衆におもねることにもなります。聴衆は知らない歌よりも有名な歌が聴きたいですからね。」
(市橋雄二/2015.4.27)