ブリュッセルのアパートで妻と娘と三人で暮らしている神様はパソコンを駆使しつつ世界を支配している。10年間、一歩も外に出ないで、邪悪な法則などを作って、人間の運命を弄んでいる。
ある日、そんな父に反発する10歳の娘、エアは人間たちに、運命に縛られずに、自由に生きて欲しいと思い、人の余命を知らせるメールを全てに送ってしまう。突然、自分の余命を知らせるメールを受け取った人間たちはパニック状態に陥る。
エナは家を出て、新たに六人の使徒に会って、「新・新約聖書」(原題)を作ることにする。現代社会に急激に蔓延したIT社会だからこそ設定できた奇想天外な舞台設定だ。
余命を知らせるメールを受け取った人間たちはいかに行動し、自分に向き合うかという基本的で、本質的なテーマが浮き上がってくる。
エアが会う市井の人々や六人の使徒との語らいや思いを軽妙洒脱に、時にはホロ苦く描きながら、ぬくもりを湛えた視線が優しい。
監督は1957年ベルギー生まれのジャゴ・ヴァン・ドルマル。キャリアの長い割に寡作ながら独自の才能の持ち主と言われている異才だ。家にあるキリスト像の置物が動き出して喋り出したり、カトリーヌ・ドヌーブとゴリラとの絡みなど、意表をつく描写が楽しい。エナが使徒たちから感じ取る音楽が効果的に使われており、シューベルトの「死と乙女」シャルル・トレネの歌う「ラ・メール」などの流れるシーンが懐かしく、心情をくすぐる。