大地震・大津波・原発事故という未曾有の三重苦の中で双葉町の人々が積み重ねる営為。抑制をギリギリかけながら、淡々と彼らの日常風景、民謡・太鼓・踊りなどの修練風景の描写が日常性を滲ませれば、滲ませる程、そこからじわっと滲み出してくるのは平穏な日常性を奪われた現実の重みだ。
この映画は福島とハワイとの芸能を通じての、時空を超えた繋がりが描かれ、そのことがこのドキュメンタリー映画の奥行きを深いものとしている。
スタッフとして参加しているプロヂューサーの岩根愛は今年、写真集「KIPUKA」(青幻社)で木村伊兵衛賞を受賞したカメラマンであるが、震災前の06年からハワイにおける日系文化に視座を据えながら、震災後の福島にも居を移しつつ、ハワイ・福島関連を追求してきた。映画の中でも360度回転するカメラで取材する姿が描かれている。岩根愛のしてきた仕事を、監督中江裕司が包含したことが、この作品の時間的・空間的な広がりをもたらした。
監督中江裕司が「故郷を離れるとき、人は唄をたずさえてゆく。唄は新たな土地で根付き花ひらく。福島からハワイへ、北陸から双葉へ。・・・」と述べているように。(「盆唄」HPより)