「メインテーマは殺人」〜アンソニー・ホロヴィッツ

2018年に翻訳刊行された「カササギ殺人事件」(創元推理文庫)は年間ベストテン7冠達成という快挙を成し遂げたことで著者の名前は忘れられないものとなった。その面白さは単なる推理小説というジャンルを超えたものであり、読み物としても逸品であった。今回の「メインテーマは殺人」も前作に劣らずの快作となった。  元刑事のダ……続きを読む

「熱源」川越宗一著〜スケール豊かなアイヌ民族誌

レニングラード大学で民族学を学んだロシア人女性伍長クルニコワが1941年、ふとしたことから耳にした1904年の録音から流れてきたアイヌの歌と琴の音から物語は始まる。この導入部はラストの大詰めに連関するのだが、巧みな構成だ。 大きな筋は、アイヌとポーランドの二人の青年のうねるような生きた歴史そのものだ。 樺太(サハリン)……続きを読む

冷徹であり、相対化する明快な分析〜「21Lessons」:ユヴァル・ノア・ハラリ著

「21Lessons     21世紀の人類のための二十一の思考」と題されている本書は、イスラエルの歴史学者・哲学者ユヴァル・ノア・ハラリにより、『サピエンス全史ー文明の構造と人類の幸福』と『ホモ・デウスーテクノロジーとサピエンスの未来』に続いて発表されたものである。共に世界的なベストセラーになり……続きを読む

アメリカ人日本文学研究者の価値ある試み〜「井上陽水英訳詞集」(ロバート・キャンベル)

本書には題名の通り井上陽水の歌詞50編の英語対訳が収められている。アメリカ出身の筆者はハーバード大学大学院で日本文学を研究したあと1985年に来日し、30年以上日本の大学で教鞭をとった。近年はテレビやラジオでも活躍していて、その親しみやすく優しい語り口から好感を持つ人も多いことだろう。本書は英訳そのものの味わいもさるこ……続きを読む

日本社会の岩盤に突き刺さる〜「敗戦後論」加藤典洋 著(ちくま学芸文庫)

『戦後の日本人は、なぜ先の大戦の死者をうまく弔えないのか。なにゆえ今も、アジアへの謝罪をきちんと済ませられないのか。なぜ私たちは、占領軍に押しつけられた憲法を「よい憲法」だと感じるのか。このような敗戦の「ねじれ」の前に、いま、立ちどまろう。そうでなければけっしてその先には行けないーー。』(「敗戦後論」カヴァー裏表……続きを読む