アメリカ人日本文学研究者の価値ある試み〜「井上陽水英訳詞集」(ロバート・キャンベル)

本書には題名の通り井上陽水の歌詞50編の英語対訳が収められている。アメリカ出身の筆者はハーバード大学大学院で日本文学を研究したあと1985年に来日し、30年以上日本の大学で教鞭をとった。近年はテレビやラジオでも活躍していて、その親しみやすく優しい語り口から好感を持つ人も多いことだろう。本書は英訳そのものの味わいもさるこ……続きを読む

日本社会の岩盤に突き刺さる〜「敗戦後論」加藤典洋 著(ちくま学芸文庫)

『戦後の日本人は、なぜ先の大戦の死者をうまく弔えないのか。なにゆえ今も、アジアへの謝罪をきちんと済ませられないのか。なぜ私たちは、占領軍に押しつけられた憲法を「よい憲法」だと感じるのか。このような敗戦の「ねじれ」の前に、いま、立ちどまろう。そうでなければけっしてその先には行けないーー。』(「敗戦後論」カヴァー裏表……続きを読む

「宝島」真藤順丈著(第160回直木賞)〜突き抜けた感性・語り口の歌謡性

沖縄の1952年から1972年の20年にわたる起伏に満ちた時代、それは終戦直後に始まる米軍統治時代から日本復帰までの激動の沖縄の現代史だ。沖縄の青年、男女が生き抜いてきた、あまりにも苛酷で、痛切な思いに満ちた青春群像叙事詩である。 遠くから聞こえてくるエイサーの音色とともに島の英雄であり、戦果アギャーと呼ばれるオ……続きを読む

「新復興論」〜小松理虔著(ゲンロン社刊)〜福島の現実を超える突破力!

2011・3・11の東日本大震災は日本歴史上だけではなく、世界史的・地球規模的にみても、未曾有の災害であった。地震による揺れと津波、そして原子力施設の爆破破壊という自然災害と人災が複雑に入り組んだ複合的で巨大な災害だった。その影響は今だに東北各地の人々、避難を余儀無くされた地方自治体、そこに生活の根拠を持って生き……続きを読む

精緻なミステリー『カササギ殺人事件』 アンソニー・ホロヴィッツ

アンソニー・ホロヴィッツの圧倒的な面白さに満ちた謎解きミステリーの金字塔だろう。ページをめくるのが怖いような興奮と早く謎を解明したいという欲求に駆られながらの読書体験も久しぶりだ。 舞台は1950年台半ば。イングランドの田舎の小村、渓谷の森と湖を持つ貴族の屋敷で起きる二つの死。携帯電話、コンピューター、インターネ……続きを読む